これからの楽器のあるべき姿

2020年を振り返ると、生活環境、仕事の内容、考え方が、多くの方がそうである通り、楽器製作をしている身にも大きく変貌があった。

今までの生活は便利で、華やかで、人との差で物事を判断することが多かった気がする。私が高校の頃、名古屋市で一国分のルイヴィトンの売上があるらしいと、(真偽は分かりませんが)噂になった。こぞって、ブランドの財布を学生服の後ろポケットに入れ、カッコつけていたのを思い出す。

それが、リーマンショック辺りから、ロハス、自然食品、良いものを長く大切に使う風潮が出始めてきた。2010年ごろには、ノマドやシェアリングなど共有して使うブームすら起こってきた。

2020年以降、このコロナ禍で明らかに時代が変わる。それぞれが、自分の時間を大切にし、会えないため繋がりを厳選して、人と人との繋がりが太く深いものになり、より自由を求める。物に対しても、経済が落ち込む為、無駄が省かれていくはずだ。

ある意味、これまでの資本主義の終焉とも言える事態だが、環境問題、人種差別など、これまでの問題を解決するきっかけにもなる。

話は変わるが、今年は、出かけることが少なくなったため、昼休憩に近くの緑地公園に毎日のように散歩に出かけた。

そこで気がついたことは、毎日のように季節が移り変わり、虫の生命の虚ろい、同じ日が一日もなく、匂いすら変わっていく。葉は芽吹き、深まり、紅葉し、散る。当たり前だが、感じると驚く。

人間の行いも、毎日同じことをしているようで、移り変わり、変化する。

この事を、楽器にも反映させたい。この世に、対称なものなどひとつもなく、機械が作るもの以外、完璧ではなく、同じ種でも一つ一つ異なる。右目も左目も、右手も左手も異なる。

楽器も同じはずである。資本主義真っ只中のヴァイオリンと今のヴァイオリンは作り手の精神面から異なるはずである。今こそ、ヨーロッパ中世、日本の飛鳥時代の精神と近い地点に立つべきだ。

そういう感覚を感じ、反映させ、取り組み、失敗し、良いものを目指す。コロナでワークショップにも行けず、情報交換も出来ず、大変なことも多い。ただ、今は考える時で色々やれるチャンスでもある。今ある時間を大切に、今年の生活、頼ってきてくれた方々、力を貸してくれた人に感謝の気持ちで一年を締めくくりたい。

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viola Andrea Guarneri

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作り出すとは